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幻想は情報量と反比例する

昔の作品で今でも名作と認められ常に参照されるものがある。そこで、常に今の作品と比べて、昔の名作の品質がそれほどまでに優れているだろうかと言う問いについて書く。

当然、時代が違うから質の違いは、計り知れない。まして、昔の作品を評価するときは、ある程度結論ありきで評価することが出来るから、視点を変えればいくらでも良い点をあげることが出来る。また、過去の作品というのは、少なからず幻想を持って語られることが多いと考えている。

昔の名作を貶す気は毛頭ないけれども、その状況をみるたびに、極めて高い評価や崇め立てられるものは、決まって情報量が少ないと言う条件によって生まれるという仮説が頭に浮かぶ。

冒頭から、やや複雑な考えについて、挙げたけれども、ここで具体例をあげる。

ドラゴンボールという漫画がある。日本漫画の歴史でいえば、圧倒的に伝説の作品であり、日本に止まらず、世界にも影響を与えた作品だ。

ドラゴンボールは、漫画の巻数でいうと、42巻で終了し、近年の週刊少年ジャンプの漫画と比較しても、ある程度人気の漫画であれば、42巻は優に超えることが多い中で、この作品が与えたインパクトというのは現在までも、これからも多大だ。アニメや映画、ハリウッド実写化(これは、失敗だったが)やゲームやグッズなどの様々なコンテンツに波及している。

ドラゴンボールは、ストーリーも絵も非常に魅力的で、極めて特別な作品だ。

ただ、ドラゴンボールは、今の作品と比べてどうか?という問いがある。間違いなく名作で、私も大好きだし、私が少年だった頃は、すでにドラゴンボールは、少年ジャンプで連載されていなかったが、少年ジャンプを毎週買っていた私に、ドラゴンボールよりも面白い作品があったかと聞けば、なかったと答えたかもしれない。でも、それは、ある程度の幻想が働いているのではないかという考えがよぎってしまう。

では、時間だけが問題かというとそうではない。私は、テクノロジーの発展に関連があると思っている。特に、SNSなど情報の流通を可能にしたテクノロジーと非常に密接があると考える。

例えば、今、連載している作品などは、当然、現在進行形で、この作品に関する評価・関連グッズイベントの情報・作者の人柄などの膨大な情報が存在する。

この環境は、良くも悪くも、作品そのものにのめり込む事を阻害してしまう。例えば、あなたが圧倒的に面白い作品に出会ったとしても、SNSで、作品内における話の矛盾を指摘する投稿を見たときに、どう感じるだろうか。喜怒哀楽は抜きにして、その情報を意識しすぎないまでも、何かモヤモヤしてしまうかと思う。

さて、これまで、漫画の例を挙げたけれども、人に対する評価も同じである。歴史に名を残した大統領や総理大臣も伝記や逸話が強烈にインパクトがあって、こんな人が今いればなどと思ったとても、限定された情報以外は知り得ないし、情報も残されていない。

トランプ大統領について考えると、例えば彼は、ポルノ女優問題のように過去の行いや発言に基づいて集中砲火を受けている。それを見ると、色んな情報を元に、彼をこき下ろすことは非常に簡単に思われる。(トランプだけではなく、完璧な人間なんていないのだから当然だ。)。ただ、彼も負けず劣らず、その情報量を逆に利用して政治をダイナミックに動かしているから、彼のパフォーマンスやバイタリティは本物だろうとも思う。

一方で、トランプ大統領でさえ、現代のこの情報量で多くの批評にさらされるわけだが、見方を変えると、SNSやインターネットが本格的に発展したのなんてここ数十年だから、彼の年齢を考えると、40-50歳ぐらいまでの情報は出て来たとしても限定的だ。

つまりは、大統領が次のジェネレーションに移ったときには、おそらく、その世代の大統領は、生まれてから現在まで多岐にわたる情報が今よりも確実に残っているだろう。

そうなったときに、トランプはともかく、これまでの大統領などとフェアに比べることは到底出来ないだろう。

そして、(今の流れもそうなりつつあるように、)今後より、ポピュリズムな政治にならざるを得ないという流れになってしまう。

政治については、ここでは、あまり深く言及しないけれども、一般的にも自分が知覚出来る範囲だけでも何かを評価するときに参照できる情報というのはあり触れているし、今後も増え続けるから過去のものと今のものを比較するのは困難だし、過去のものには幻想のバイアスがかかっている。

現代の環境下の中では、良くも悪くも、幻想は生まれず、FACTに基づいた極めてシャープな分析が出来てしまう。直近でも、FACTFULNESSが流行っていたが、おそらく一時的なことではなく、今後も多くの人がああいった考えを重要視する流れになると思う。(ちなみに、あの考えの根幹は、抽象的な悲観に対して、データで現状を正しく捉えようというものだったから、今回のブログとは若干ニュアンスが違うかもしれない。)

結局、幻想が生まれなくなったことが良いことか悪いことかは置いておいて、もう過去への哀愁以上の幻想というのは生まれにくくなっているということは理解しないといけない。

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