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戦略的撤退に対する損失

ずっと前に、ある投資家に、良い起業家を判断する基準は何かと問うと、"撤退出来る時に撤退出来るかどうか"と言っていて、なるほどと思ったことがある。

投資及びビジネスの世界では鉄則であって、多くの人が口にすることだと思う。

私も何らかの事業や施策には、明確な撤退条件がないといけないと考えているから、この種の意見には、ほぼ全面的に同意である。

ただ、どん底状況が続いたのにも関わらず、ある時期からV字回復が出来た、というストーリーも少なくないから"撤退出来るときに撤退する"というのは口で言うほど簡単ではない。

そもそも、戦略的な撤退の目的は、それ以上の損失が生まないことと、本来は現行の施策に投入するはずであったリソース確保し、別の施策に投入出来ること(そして、それがリターンを生むことを見込む)である。逆に、撤退のデメリットは、機会損失だ。

だから、損失回避とリソースの確保に対して、機会損失の大きさを比較する必要がある。(尤も、そのオプションの価値は事前には想定出来ないものばかりなのだが)

では、これらを毎度フェアに比較するべきか、という疑問については私なりに答えがある。

つまり、冒頭にも書いた通り、私の場合は、"いかに撤退しやすいか"にこだわる事にしている。(イメージがしやすいように極端言えば、撤退することを念頭に考えるので、撤退か否かになったときに、必然的にその議論では撤退が有利になる。)

こう考えることのメリットとしては、徹底 or not ではなく、自分のポートフォリオの配分の議論に集中出来ることだ。

言い換えると、いわば、自分 vs 市場 の二項対立から離れて、自分の全体的戦略の議論に移るイメージだ。

戦略撤退を実現するには、いかに理想的なポートフォリオを作り上げるかのみ、が意思決定に影響するべきであって、市場との対局の中で意思決定をするのは望ましくないと考える。

いかに、相手よりも柔軟な選択肢を持てるかが、自分の立場を保護するために重要な観点だ。

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