当たり前のことは言わないほうがいい。当たり前のことを言わないほうがいいというのは当たり前、という自己矛盾を抱えるテーマにはなるのだが、そこはちょっと見過ごしてほしい。
会議などで、発言自体があまり意味を成していなかったり、自明であったりするのにも関わらず意見として表明されるようなものだ。
早速、具体例を出そう。
・〇〇だからといって、〇〇なわけではない
・〇〇しすぎても良くない
といった言い回しは、結構散見されるが、そもそも論理的に自明であるケースが多いから、付加価値がない発言だ。
また、以下のように、
・目先の利益のためだけに企業経営するのは良くない
・企業は競争社会において、独自の戦略を考えなければならない
・経営者はテクノロジーについて理解があった方がいい
上記のような一見もっともらしいことを言っているが、どう考えても当たり前のことを言っている。それ自体に何か意味があるわけではない。
当然、これらは文脈に依るわけだけれども、あまり意味があるケースは少ないだろう。
ちなみに、"文脈・状況による"というのも当たり前の話だ。何かの議論していて、"それは状況によりますね。"とだけ言い切ってしまう方がいると、それはそうだろう、と呆れることがある。そういう人は保身・保険のためにその文言を用いているのだが、相手に失礼な印象を与えていると思う。少なくとも、付加価値はない発言である。"文脈・状況による"等の文言に限らず、言葉つなぎのために、付加価値のない発言をする者が、そのあと意見を求められることは少なくなるだろうし、議論の場に呼ばれなくても文句は言えないとだろうと思う。
さて、ここで"意味をなさない文言だけ"を用いて一節書いてみよう。
"企業はビジネス環境のめまぐるしい変化に対応することが求められる。
そして、今や、競争が求められるのは、企業だけでなく、個人もそうだ。優秀な大学を出て、大企業に就職すれば安泰なわけではない。たとえ、東京大学を卒業したからといって、ビジネスで通用するとは限らない。
これからは、短期的な視野で利益を享受しようとするのではなく、長期的な利益を意識する大局観が必要だ。企業としても、目先の利益ばかり追うのではなく、長期的な戦略を練るべきだ。
しかも、企業戦略はビジネススクールで教えられるような座学の理論を、現実のビジネスに当てはめることではない。
企業を取り囲む環境は、企業によって違うのだから、それぞれにあった練略が必要だ。
また、今の時代、GAFAに代表されるようにテクノロジー企業が台頭している。これらの企業の経営者は全員がテクノロジーを深く理解し、将来のビジネスの変化を見越している。これからは、経営者もテクノロジーを理解した方がいい。ただし、テクノロジーを理解するだけではダメで、実際にビジネスに活かすことが必要だ。"
といったところだろうか。
読んでもらったら分かると思うが、この文章は一行たりとも意味のあることを言っていない。
しかしながら、このように意味ない文章・評論というのが世の中に腐るほどある。私も腐るほど見てきた。これからも目にするだろう。
こんな当たり前のことは言わないようにしたい、という当たり前の話。
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