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悲しみと仕組み化

数日前に、恋人と二人で銭湯に行ってきた。私の方が早く出たので、ロビーで座って待っていた。

待ってると、ある一人の女性が番台で鍵を返却して、出て行こうとしていた。
すると、番台の人が「あ、2時間を超えています...」と言った。

どうやら、その女性は規定の入浴時間を超えていたらしい。

当然、超過料金を払うべきなのだが、その女性は「今日はお金持ってませんので!」と言いながら強引に出て行こうとしていた。
番台は、「では、次回お支払いください。」と言った(これでも充分過ぎるぐらい譲歩していると言えよう。例えば、万引きして、次回お支払いくださいはあり得ない)。
すると、まさかその女性は、「もし払えたら払います!あなたお名前は?どんな字ですか?覚えておきます!」と半ば恫喝する感じの発言をして、帰っていった。
呆気に取られた。なんて理不尽な振る舞いだろう。

小さな銭湯だったので、番台は一人しかおらず、ロビーの待合室は私しかいなかった。
番台は、怒りを表に出さず(というか、私と同様驚きが多かったと思う)、素直に答えていたのだが、横で聞いている身としてはその番台が非常に気の毒だった。ただ、番台も慌てふためいた様子でもなかったため、このような厄介な客はたくさんいるのだろうと推測した。

具体的な罪名は分からないが警察沙汰でも申し分ないレベルだろう。あまりの理不尽さに入浴後の気持ち良さが少し掻き消された感じがした。
そのクレーマーの女性も、スッキリするために銭湯に来ているのに、そんな態度をとって気分が悪くならないのだろうか。

何よりもそのクレーマーが去った後、番台は何を思ってたんだろうと想像すると、心の底から悲しい気分になった。よっぽど、"大丈夫でしたか?大変でしたね。"と声をかけようか迷った。別にそれで解決はしないのだが、人と話すことで少しは気がまぎれるだろう。
その後、時間差でもう一人別の番台が現れて、「さっきこんなことがあったんだ。」と話しているのを聞いて、少しだけほっとした。とはいえ、まだ悲しい気持ちの方が大きいはずだ。
私も、その後入浴が終わった恋人と合流して、さっきあったことを話してやっと、少し気が和らいだ。
そして、そんな出来事の他にも、もう一つ気になったことがあった。

銭湯には、初めて来る人だったり、リピートしてくる人がいる。色んなお客に対して、番台が「靴箱のカギはお預かりしますね。」「脱衣所のロッカーはどれを使ってもらっても大丈夫です。」「バスタオルはこちらに入れてください。」とひっきりなしに同じようなことをお客さんから質問されたり、お声がけしていた。
私が待っている30分ぐらいの間に少なくとも10以上はそんなやりとりを聞いた。

繰り返し同じこと伝えるの大変そうだなと思った。券売機はあったが、券売機のない銭湯だと、このようなコミュニケーションは倍以上になるだろう。
さっきの出来事も含め、事前に仕組み化出来ている部分があれば、もっとオペレーションが楽だし、何よりも理不尽な悲しみに合う人が減るのになと思った。

余談だが、私は初めて行く店はサイトなどを見て、事前に情報収集する。どんな店か、どんなシステムか調べたり、それを元に想像してからいく。気にしすぎかもしれないが、店員さんにいちいち分からないことを聞いたりするのが苦手で、気後れしてしまう。
店員さんの立場に立ってみると、理不尽に怒る人と対面したくないのは勿論のこと、繰り返し同じことを伝えるということは億劫だろうなと感じる。そして、自分の近くにいる人が(知り合いでなくても)、仕組みが整っていないせいで気の毒な出来事に合っている場面にも遭遇したくないなと思った。
少なくとも、繰り返し作業だろうがなんだろうが、あの人はその作業をするために雇われているんだ、と何もせず言い切ってしまうような人にはなりたくない。出来る限り仕組み化は続けたい。

課題に対するソリューションとしての仕組み化はよく言われるけれど、もっと感情ベースに言い換えて、悲しい思いをしている人がいるかという面に着目したい。

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