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大企業病アンチテーゼ・アンチテーゼ

失敗の科学という本を読んだ。
ざっくり言えば、医療ミスや、飛行機墜落事故などのミスなどを例に挙げ、その失敗の原因などについてを分析するといった内容だ。

失敗の原因として、社会的な上下関係があるという点が最も印象に残った。
例えば、手術の緊急インシデントが発生して担当の医師がパニックに陥っているときに、看護師はこのようにしたらいいのではないか、というアイデアがあるものの、 医師という自分より上の立場の人間にいえない、もしくは自分より専門性が高いので自分のアイデアよりも医師の対処法の方が正しいはずだと考え何も言い出せないという状況である。

このケースだと看護師の責任がないことは一般的に当然として、医師が技術的責任はあるかもしれないが、看護師に意見を言わせたくないという思想があったわけでもないだろう。
目的はインシデントを切り抜けることであるから、誰の意見であっても正しい意見であれば受け入れる可能性は高い。
(もちろん、それにあてはまらない選民思想に陥った人が世の中あまりにも多いことは理解している。)

ポイントとしては、このようなケースをみたときに、"心理的安全性は大事"とか"立場にかかわらず本音で話そう"とかいう浅い所感になるのは危険であるということだ。
ベンチャー界隈(揶揄する意図はない)は特にこのあたりの主張をしているのが散見される。私も心当たりがあるし、将来やってしまわないと言い切れる自信はない。

個人的な結論としては、年上や上長に対しての発言や提案に対してはこのような社会的心理圧力みたいなことは"絶対に"発生すると見なした方がいいということだ。"絶対に"。

絶対に発生する。だから、完全には防げない。
だからこそ、経営者やマネジャーが、なんでも本音で話そう、とか、意見とかなんでも言ってほしいみたいなことは通用しない。絶対にそれは無理という前提を持った方がよい。

では、どうするか。これに対しては、徹底的に明文化・ルール化をし続ける、しかないと考えている。

ルールで息苦しくなる、という批判があるだろうと思うが、余計な属人性を省くためには原理原則を固定にして、それに従うという方法にしてやっと社会的圧迫から逃れられると思っている。
順番が前後してしまうが、ベンチャー界隈でよくありがちな"本音ではなそう"という意見と同じぐらいよく聞く主張として、"シンプルにしよう"というのがある。

これは、"本音で話そう"という言葉に加えて、このシンプルにしようというのは、それが出来ない大企業に対してのアンチテーゼだろう。
シンプルにした結果、全くオペレーションが整わず、作業の丸投げの応酬、誰かが必要以上に無駄に工数をかけているという状態になる。

全体最適の観点からルールを増やすしかないと個人的な経験からは考えているが、提案しても十中八九それに関わる人がすぐに腹落ち出来るものではない。
人は基本的に変化を嫌うし、全体最適だからといって、今まで丸投げしていた部分が自分の工数が増えるのがいやだからである。(そもそも丸投げは必ず本人に返ってくるべきなのだが。)

それでも、ルール化してやりきるしかないと個人的には考えているし、そう進めている。君が確実に正しいのかといわれると、100%ではない。しかし、いろいろな要素を考慮した結果であるし、自信もって正しいと思いながら進めている。

本音で話そう、シンプルにしようは、一見正しいことに思えるが、極めて表面的で誰かの必要以上のポジショントークになっていないかということは見極めなければいけない。
問題に向き合ってない故のポジショントークであれば、そんなものに自分自身の思想が干渉されるべきでないし、反発するべきだ。

大企業に対するアンチテーゼであるベンチャー界界隈に対するアンチテーゼである。
改めて言いたいのが、ベンチャー界隈を馬鹿にする意図は毛頭ない。繰り返すように私もベンチャー界隈にいるからである。

ただ、書いたように、社会的上下関係はその立場の発言に絶対に影響するし、それを解決するためにはルール化しまくるしかない、と私は考えているということだ。

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