採用するときなど他者を評価する際に、人はしばしばその人の経験(実績)に重きを置く。
しかし、経験だけではその人の真の価値を測ることはできない。経験のほかには、成長力という軸も必要で、環境に対する適応力だったり、その後貢献する力が高いかである。
難しいポイントとして、評価する側にとっては実際に行動したこと、つまり経験は目に見える指標であるため、どうしても経験に重きを置いてしまう傾向がある。つまり、成長力を推察するうえでも、その根拠は過去の経験になるはずである。
必然的にスパイラルが発生する。このスパイラルから抜け出すためには、経験と成長のバランスを取ることが求められる。具体的には、過去の経験だけでなく、その人が経験から何を学び、どのように成長してきたかを評価の一部に組み込むことが重要だ。
経験以外でその人の成長力を図るとしたらどのような指標があるだろうか。例えば、素質、学習能力を過去の経験以外でどのように測れるかと考える。
まずそもそも経験があてにならないケースがあるとしたらそれはどんなものか。経験は、確かにその人が過去に何をしてきたかを示す重要な指標である。例えば、ある職場で長年働いている人や、特定のスキルを長期間磨いてきた人は、その分野での知識や技術が豊富であることが予想される。
しかし、同じ経験を持つ人の中でも、成長の度合いには大きな差があることが多い。単に長い時間を過ごし、特定の業務フロー内で同じことを繰り返していただけでは、必ずしもその人が優れた成果を上げることには繋がらない。ただ、事例を多く知っているというだけで、技術が上がっているわけではない。(もちろん、事例を多く知っているからこそ、身につくセンス、直観的に正しい判断を下す能力は身につくだろう。)
であれば、経験を評価する場合でも、その人が経験をどのように活かして成長してきたかを考慮することが重要だ。それが環境要因などの外的要因によるものなのかなどで分析するアプローチが考えられる。(たとえば、売り上げ1億円の事業をつくったという実績は、予算がありふれている会社ですでに既存顧客のリードを活用した事業であればそこまで個人の能力に起因しない。つまり、誰でもできる代替性の高い実績である。)
例えば、新しいスキルを学び、困難な状況に適応し、失敗から学び続けている人は、単に同じ仕事を長く続けている人よりも高く評価されるべきだ。成長のプロセスは、その人の柔軟性や学習意欲、問題解決能力など、多くの重要な資質を反映している。
今まで採用にいくらか関わってきた中で、最もコストパフォーマンスがいい採用とは、個人的に基本的に【① 実績があまりないため市場の評価は低い人】が、【② 知られざる価値を見出したうえで、市場よりも高く評価し】、【③その人が満足するような高い報酬を設定すること】だろうと思う。「安く買って高く売る」という株式の原則に近い感覚だ。③は必須ではないが、ここが低いと他社に負けるか、入っても報酬に満足できないため離脱してしまう。また、パフォームしやすい環境・業務をいかにマッチさせられるかも重要だ。
今まで私が経験した例でいえば、Webディレクターの採用を出したときに、当該領域に詳しくない人が応募してきた。しかし、彼の面接での対応や、テスト的に業務を依頼したときの対応が抜群に良くて、そのあと末永く付き合っていただいている例。おそらく、私以外の方が面接していたら面接にたどり着くことなく、選考落ちしていたはず。(しかし、これはとてもうまくいった事例であり、もちろんたくさん失敗もあるので、私の人を見る目が特別長けているわけではない。)
成長を評価するにはどんな変数があるだろうか。その人の内面的な変化や態度の変化があげられるかもしれない。自己反省を重ね、他者とのコミュニケーション能力を高め、人間関係を築く力を向上させている人は、組織や社会にとって非常に価値のある存在となる。こうした成長は、経験だけでは測ることができないが、その人の全体的な人間性やリーダーシップの質を大きく向上させる。
もちろんその成長の結果売上や利益などにつながるから実績となるわけなので、ただ単純に内面的な成長をしたと説明を受けたとしても評価は難しい。
つまり、明確な経験などの実績以外にその人の素質を評価するための指標として準備しておくことが大切だ。最近よく聞くMBTIなども採用に使われているケースがあるという。MBTIの蓋然性は一旦置いておくとして素質を図る手法としてはたしかによい。(※ 補足すると、MBTIは科学的根拠が乏しいとされている"らしい"。一方、ビッグファイブモデルやMMPIなどの診断ツールは、科学的根拠に基づき高い信頼性と妥当性が認められているとのこと。ちなみに、科学的根拠とは、再現性や一貫性などの信頼性(Reliability)と、内容の網羅性や実際の行動との結びつきなどの妥当性(Validity)などの基準のほか、実証的研究(Empirical Research)がされているかなどが基準になっているらしい。)
MBTIという素質を測るうえで微妙なものを例をあげちゃったが、新卒などで使われるSPIなどのテストやプログラマーにおけるプログラミングテストなどは実績ではないが、素質や現状の能力を図る手法のうちのひとつであろう。
他にも面白い実例をあげてみよう。
「1兆円を盗んだ男 仮想通貨帝国FTXの崩壊」という本を読んだ。著者は世界で最も有名な経済小説家のマイケル・ルイス。彼の作品はどれもおもしろい。
さて、同作品は過去最大級の暗号通貨取引所であったFTXを作ったバンクマン=フリードの半生をテーマにした経済小説。
知らない方のために補足すると、同社はすでに破産しており代表のバンクマン = フリードも顧客から80億ドル (約1兆2000億円) 以上を盗んだ刑で禁錮25年の判決が下された(知らなかったんだけど、FTX Japanという日本法人はBitflyerが買収したらしい。)
とてつもない規模の金融事件なので、彼の罪が重罪であることは大前提とするが、ピーク時に3兆円も築いた一大事業を築き上げた彼の思想や設立にいたった背景などは興味深いからおすすめ。
前置きが長くなったが、彼はMITを卒業して、すぐにヘッジファンドのJane Street Capitalにインターンを経て入社するのだが、その際の選考がおもしろい。
同社は、一般的な企業が評価するような経歴・実績などはあてにせず、初回の電話面談で確立に関連した数学の問題を出して選考し、ゲームをしたり、インターンのメンバーにもギャンブルを奨励したりもする、主に確率に対しての向き合い方、感情などは除いて機械的なトレードができるかなどトレーダーとしての素養を図る。
トレーダーだからこその選考であるが、たとえば確率に対する計算などはトレーダーとして nice to haveなスキルではなく、must to have な素養であり、それが重要であるがゆえにこの点を重視してフィルタリングしたわけだ。まして、仮想通貨取引という当時はアヤシイ界隈だからこそ、あまりマトモな人間がよりつかないからこそ、なおさら実績/経歴よりもそれらの素養を重視したほうが望ましいと考えたのだろう。
さらに、must to have なものに重み付けしてフィルターをはかるのは面白い。営業力、英語力、文章力、SPI(のスコア)などあればよいが、条件を増やしすぎてパフォームするはずだった人をフィルタリングしてしまう可能性もある。
(P.S. 平均リターン37%といわれる伝説のヘッジファンドのルネッサンス・テクノロジーズをテーマにした"最も賢い億万長者"という経済小説もおもしろいので、上記とあわせて興味がある方はぜひ。 )
その評価結果がいかに正しいかは事前にはわかりづらいことではあるが、成長を評価することは、他人に対する期待や信頼を表すことでもある。成長を重視する評価は、その人にさらなる挑戦を促し、自己の限界を超える意欲を引き出す。逆に、経験だけを重視する評価は、過去の実績に縛られ、未来の可能性を見逃す結果となりかねない。
まとめると、他人を評価する際には、その人が現在どのように成長しているか、そして将来どのように成長し続ける可能性があるかを経験以外のどんな変数を準備できるかという話である。人は経験を過大評価し、成長を過小評価する傾向があるとするならば、成長の価値を認識し、それを自分なりの評価基準に加えることで、より納得のいく未来志向の評価が可能となるだろう。
長々と書いたのに、「じゃあ、どんな指標を置くべきか」という具体的な問いには答えないいつものスタイル。
あ、そうだ。採用面接を背景とした評価の話をしたけれど、もともとは評価なんてあてにならないよって話をしたかったのだ。特に自分の評価を客観的に評価したところで、あまり意味ないから気にするなって話をしたかったんだよね。以上。
※ 本ブログは「人は経験を過大評価し、成長を過小評価する」という仮説をもとに、ChatGPTと議論した内容をもとに作ったブログである。
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