本の要約動画って、著者や出版社が怒っている話とか聞いたことないなぁ、と疑問に思ったことでこのブログを書く。
私もたまに見るし、見るからこそ思う。
だいぶ前からYouTubeで本要約チャンネルが流行している。
特にビジネス書や自己啓発書が短時間で要約され、そのエッセンスを手軽に学べるというスタイルは、前回のブログにも関連するが忙しい現代人にとって魅力的だ。
しかし、マーケターの端くれとして、これらの要約動画が本の売上にどのように影響を与えているのか、あまり著者や出版社がこの現象に対して異議を唱えるケースが少ないのはなぜだろう?と疑問に感じた。
単純に販促だろうけど、本当に販促になるの?と思っている。
「これが本の販促になる」という理屈は、本要約をするチャンネルのYouTuber側の都合の良い解釈ともいえる。
特にビジネス書や実用書のような、(小説などの読書体験を目的にするものとは違い、)知識共有を目的とした書籍は、要約で核心的な内容が伝わることで読者がそれで満足し、本を購入する動機が失われるリスクがありそう。
要約動画が本来の購買行動を阻害してしまうのではないか。
この現象は、本のみに限られたものではない。
たとえば、ゲーム実況も人気だが、ゲームの内容をそのままプレイして公開することで、ゲームの購入意欲が減退するという懸念もあるだろう。私はゲームはしないけれど、たまに昔やってたゲームを懐かしく思い出して、検索して見たりする。
子供のころ、ゲーム実況があれば、めっちゃ見てただろうなと思うし、いくつかのクソゲーをプレイせずに済んだはず。
失敗を防げるというのはゲームに限らず、消費者にとっては理想だけど、会社側は売り切りで販売しているのだから、失敗を防げるという”まとも”な理由で売り上げが減ったら、反論できない分、やるせない気持ちになりそうだなぁと勝手に同情してしまう。
売上上がらないと、次のゲームも作れないしなぁ。
ゲームの場合は映像であるから、映像の著作権も関わるのが理由なのか、YouTubeマネジメント会社のUUUM社が任天堂と包括契約を結び、合法的に実況動画を配信できるようにした例もある。
提携内容や契約スコープに関してはあまりよくわからないが下記が参考記事のはず。
ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン
また、映画の要約動画も同じだろうけど、少なくとも私は配給会社などが販促になるからと映像を要約した動画を許容するケースは知らない。はたまた、映画館での上映という体験が一番の売上になるからなどビジネスモデルに起因するものなのかどうかはわからない。
映画やゲームなど比較すると、本要約のチャンネルは、コンテンツが文字や知識ベースであるために「販促」として許容されやすいのかもしれないが、実際には多くのリスクが潜んでいる。
話を転換してそもそも実用書の著者は、著書自体の売り上げを必ずしも最優先していないケースも考えられる。
例えば、著者が本の販売を通じて、自身のビジネスやバックエンド商材への送客を目的としている場合、要約動画はむしろ歓迎されるべきものかもしれない。著書の売り上げが目的ではなく、個人の影響力を高めたり、自社のビジネスの集客を図るための手段としての位置付けならば、要約動画が知識を拡散することはポジティブに捉えられるはず。
しかし、このような状況でも、著書の売り上げが主たる収益源である出版社にとっては事情が異なる。出版社は著者と異なり、書籍の販売が直接的な収益となるため、要約動画が購買行動に与えるネガティブな影響を懸念せざるを得ない。
本要約チャンネルにはさまざまなスタイルがある。
あるチャンネルでは、著者の個人的な解釈や関心を排除し、本の内容をそのまま抜粋して要約するものもある。この形式では、本の核心部分が簡潔に伝えられるため、視聴者が「これで十分」と感じてしまい、購買に至らないリスクが高まると個人的に思う。
一方、読者が独自の解釈を交えながら、本のエッセンスを抽出し、さらに必要に応じて他の書籍や実体験を引用しつつ、その本の魅力を紹介する形式などもある。
例えば、言語学ラジオで有名な堀本見氏が運営する 「積読チャンネル」は、まさにこのケースに該当する。彼が出版社のバリューブックス社との共同プロジェクトで運営している「積読チャンネル」は、著者へのリスペクトや本の内容への愛が感じられると同時に、視聴者に本への愛着を持たせるよう配慮されているように見受ける。
堀本氏のようなクリエイターが作る要約動画は、視聴者が「本を読まなくてもいい」と満足するのではなく、むしろ「この本を実際に読んでみたい」と感じるような構成がされている。エッセンスをもとに、彼の実体験や別の本の内容を必要に応じて引用していて、本の内容だけではなく、演者の会話を含めたエンタメとして成立している。これはすごいことだ。もはや要約チャンネルの枠組みは超えていそうだ。
書いてて思ったが、○○大好き芸人みたいな、昔のアメトーークのようだ。
そろそろ疲れたので結論としては、視聴者目線では、著者や本の内容にリスペクトや愛を感じられればOKかなとは思っているが、たまに読んだ本が大した内容じゃないなぁと思いつつ、Google検索するとYoutubeの本要約動画が出てきて、「これみるだけで十分だったわ」と何とも言えない気持ちを持つことは何度かあって、今度本を買おうと思ったときに、本要約されているかどうかを調べて、そのあと買わないというストーリーになりえる。
そもそも、出版社も、著者も容認していればOKという話という当たり前の話なんだけど、「販促になる」というのは本当か?という点は個人的にかなり疑問である。
少なくとも、例えば、要約動画が、100万回再生突破しました!なんてことがいわれることはあまりないだろう。その場合は、Youtubeで話題!みたいになるのかしら。
また、著者はともかく、ただ内容を羅列してまとめただけの本要約のチャンネルの運営者が実績として人気Youtubeチャンネルを作りました!と謳っても、それは己のコンテンツではないから偉そうに言える実績ではないだろう、とは思う。私だったら、恥ずかしくて言えないし、どんなにまかり間違っても「本の販促に貢献した!」とは言えないなぁ。
内容は以上で、おまけ。
以前、自宅に書籍がたまりすぎて、電子化してiPadで読めるようにしたいなと電子化代行業者に依頼しようとしたら、一部出版社や著者の意向で電子化できない書籍があるというアラートを受けたことがある。
おそらく、違法アップロード対策であろう。自己利用との線引きは難しいから論理は理解できるが、もちろん違法アップロードする意向なんて毛頭ないからこそ、やや腑に落ちない気分にはなった。
ちなみに、ブックオフも同じように著者や出版社の意向で売れないとかあったっけ?と思ったらそれに関連する情報ソースはなかったのでないかもしれない。
調べてたら、ブックオフの株主に小学館など大手出版社・書店がズラリ…敵対関係ではない理由みたいな記事もあり、特に敵対関係ではないそう。
ブックオフの株主に小学館など大手出版社・書店がズラリ…敵対関係ではない理由
別の視点で、ブックオフは、古くからの古書店の目利きみたいなブラックボックスに目をつけて、いい意味で、本の内容を区別せず買い取り価格の標準化、つまり情報の非対称性を解消したんだよという記事もあって面白かった。
ブックオフを批判する人が絶対に触れない「真実」
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