分析と統合

とある情報アーキテクチャの書籍を読み返していた時に、「分析」(analysis)の対比になるワードとして「統合」(synthesis)が挙げられていた。

これまで「分析」の対義語について考えたことなかったので興味が湧いたが、ひとつ疑問が浮かんだ。

「分析」の手法は世の中ビジネス書をはじめかなりもてはやされるというか、多くの人がその技術に興味関心がある一方で、「統合」に対してなぜその技術手法を語る人が少なく、関心がないのだろうか。

私自身、過去に問題解決のエッセンスをまとめたブログを書いたことがある。 問題解決のエッセンス もう4年も経つようだ。

統合に興味が持たれないのは、分析の結果おのずと結論になりえるものが帰納的に導き出されるため、統合にとりわけ技術が必要とされないという暗黙知があるのだろうか。
でも、分析に技術が必要であれば、統合にも技術が必要であると考えるのが自然だ。

おそらく、あまり言及されない原因の結論としては一般的に「分析」と呼ばれているものの中に、「統合」も含まれていることが多いからだろう。

どこまでが分析でどこからが統合かという線引きを一般的にはしていないことが多い。

ただ厳密には、分析フェーズは「要素を分解して理解する」ことが目的であり、統合フェーズは「要素を組み合わせて意思決定に収束させる」ことが目的だ。

わかりやすくするために、ユースケースを用いる。

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ユースケース:自社の新規事業として新しい分野に参入すべきか判断する

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分析フェーズでやることは、定量・定性問わず、
・市場規模と成長率の調査
・競合プレイヤーの整理と各社のポジショニング
・顧客セグメントごとのニーズと課題の特定
・自社リソースの棚卸し(技術・人材・資金・顧客基盤)
・参入障壁と必要投資額の試算
など

必要な技術としては、「情報収集力・分解の切り口の設計能力・定量化する力・定量化する力」などがあげられる。
成果物としては、その分析結果であり、「整理された情報の束」である。

統合フェーズでは、「分析フェーズで出た情報の束をもとに意思決定する」ことだ。

やることとしては、
・分析結果間の矛盾を認識する(市場は魅力的だが競合が強い、など)
・自社の戦略的意図との整合性を問う(なぜこの領域なのか)
・複数の参入シナリオを描く(どこから攻めるか)
・各シナリオのリスクとリターンを比較不能なまま比較する
・撤退条件を含めた最終判断を下す
といったことがある。

それに必要な技術としては、

・優先順位の決定(何を最も重視するか、価値観の明確化)
・不確実性の受容と仮説設定(わからないことをわからないまま扱う)
・トレードオフの言語化(Aを取ればBを失う、を明示する)
・時間軸の設計(いつまでに何が見えていれば良いか)
・ストーリー化(なぜこの判断なのかを一貫して説明できる形にする)

である。

つまり、「統合・分析」の境界線としては、解釈や価値尺度の入る余地が大きい。ビジネスでよくある「あとは決めの問題ですね」というフレーズは統合フェーズで用いられる。
(分析フェーズでも解釈・価値判断が持ち入れられないことはないと思うが、統合のほうが明らかに多いはず)

繰り返し、一般的に分析の手法が語られるときは、「分析の手法 ≒ 問題解決の手法」として語られるため、その問題解決の一環として統合が含まれることが多いと思う。

ただ、自分が何らかの分析をするときや、問題解決をするときには、分析と統合を分けて考えたほうが、これ以上は 解釈・価値判断の領域だと自覚することができる分、最終的な意思決定の納得度は上がるだろうと思う。

ちょっと退屈なブログになってしまったが、今回は以上。
もっと退屈にするために、AIは分析能力だけではなく、統合能力も高くなったので人間はいよいよヤバいみたいなチャランポランなビジネス記事にする事も可能だが悪趣味なのでやめておこう。

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