最近、小川哲「ゲームの王国」という小説を読んだ。
ポルポト時代のカンボジアを舞台にした小説でそこそこおもしろかった。カンボジアの人名で登場人物もやたら多いので、読み進めるのに多少苦労した。育児に忙しくて、読めない日もあったので、再開したら「こいつ誰だっけ」となることが多々あった。
テーマ設定・キャラ設定は抜群だと思ったのだが、展開の仕方や所々のストーリーにやや物足りなかった。上下巻でかなり長いので、個人的には他人に薦めるほどではないかなぁ、という感じ。小川哲氏の作品は他にもいくつか読んでいて好きなので、薦めるとしたら別の本かな。
ちなみに、宮部みゆきの「模倣犯」というかなり長いミステリー小説も直近で読んだのだが、偶然にも割と全く同じ感想だった。
テーマ設定・キャラ設定はめちゃくちゃ面白い (宮部みゆきはキャラ設定の天才だと思われる。端役でも感情移入させる緻密なストーリーを書ける筆力) が、やたら長くて、冗長に感じる部分があったのと、展開の仕方、この本に関しては結末が期待はずれでややがっかりした。
宮部みゆきの本は共通して、そのままTVドラマの脚本になるんじゃないかと思えるぐらい映像が浮かぶ台詞回しや情景描写があって読みやすいのだが、その分、逆を言えばTVドラマっぽさ、言い換えれば絶妙にリアリティが欠ける点が読んでいて冷めることがある。
とはいえ、「模倣犯」に関しては、高校生ぐらいの時から書店で見かけて「この本、長いけど面白そうだからいつか読みたいなぁ」と思っていたので、とりあえず読了できた達成感で人生のひとつのタスクを終えられたのは大きい。ちなみに、宮部みゆきは、「理由」が読んだ中では一番面白かった。
宮部みゆきの話にそれたが、「ゲームの王国」の話に戻ると、その中で、面白い一節があった。細かい描写は忘れたので概要だけ。
当時の極貧状態のカンボジアのある村にNPOの日本人職員が訪問する。
現地のカンボジアの若い女性が、多額の借金をしていて、毎月利子を払うので精いっぱいの状態だった。
その状況にいたたまれなくなった日本人NPO職員が自身のポケットマネーで、借金を全額返済を勧めた。そうすることで、学校に行く時間ができたり、生活の質が向上するだろうという期待があった。
後日その女性を訪問すると、借金返済にその金を充てず、その女性はテレビを買っていて、「これで毎日の楽しみが1つ増えた」と感謝した。
この出来事をその職員は下記のような言葉で振り返る。
「彼らは自分で考えなきゃいけないことが多すぎる。」
つまり、支援者側、外野側が、学校に行ってリテラシーを上げるべきだ、病院に行って最低限の疫病対策をすべきだ、とアドバイスをしたとしても、当の本人にとっては「自分で考えなければいけないことが多すぎる」状態に陥っていて、主観的に生活の優先度をとらえたときにそれと大きく異なるという話だ。
あくまでも創作ではあるが、これは非常に納得度のいく話であったし、現実にも当てはまる話であろうし、いろんなトピックに敷衍できる話である。
抽象化すれば、短期的/長期的のそれぞれの視点の話だと思われる。
ビジネスでもよく「長期的な視点を持つことが大事」という主旨のことが強調されるケースを目にする。短期的視点にフォーカスを充てる経営者は無能だというニュアンスを含めたものも散見される。
ただ、短期的な視点がおざなりになっていいはずはないし、ましてそれが誰にとっていいのかという問いがあるとすれば、視点によって異なるということに改めて気づかされたきっかけだった。
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